コラム29 畳み込みのイメージをつかもう


●FIRフィルタの差分方程式は畳み込みの一種

 漫画26で紹介したスマホアプリ、「群遅延時間とは」では入力データx[n]と係数h[n]の畳み込みを行いました。数式で表すと次のようになります。

  式2-30 FIRフィルタの差分方程式(畳み込み)

 上式では次のように畳み込みを行います。

@入力データx[n]をkサンプル遅延させて(x[n-k])とする。
Aその遅延データに対応する係数h[k]を乗算する。
Bその乗算データを累積する。


 畳み込みは「*」という記号で表し、次のような「
交換律」が成立します。

  式2-31 畳み込み演算の交換律


●FIRフィルタの差分方程式のもう一つの姿

 ここで入力データや係数の定義域外の値を0と再定義した後、畳み込みの交換律を適用すると式2-30は式2-32と等価になります。

  式2-32 FIRの差分方程式の別の表現


 上式では次のように畳み込みを行います。

@係数h[n]をkサンプル遅延させて(h[n-k])とする。
Aその遅延係数に対応する入力データx[k]を乗算する。
Bその乗算データを累積する。


●スマホアプリで畳み込みのイメージをつかむ!

 それでは式2-32の物理的なイメージをスマホアプリで説明します。図2-111のように「
畳み込みのイメージ」をタップしましょう。


  図2-111 スマホアプリの第2部から選択


@係数ボタンで適当に(例えば5タップ移動平均)選択し、Click me again and againを繰り返しタップしてください。
Aなぜ畳み込みによってフィルタリングが達成されるのか、そのイメージを捉えましょう。


  図2-112 畳み込みのイメージが描かれる


●「
入力のある一点が残す応答を累積する」ということ

 この演算の意味は次のようになります。

@入力信号のある一点(x[k])が残す応答が(x[k] h[n-k])になる。
Aそれをすべての点x[k], k = 0, 1, 2, …, N-1(Nは入力データの数)において計算する。
Bそれらを累積する。

 一連の作業を数式で表すと式2-32になりますが、数式そのものよりも、その物理的な意味を理解しましょう。


目次へ戻る