■周波数変換

 
周波数変換とはアナログ基準LPFの伝達関数H(p)を、任意のカットオフ周波数を持つアナログLPF、HPF、BPF、BRFの伝達関数H(s)に変換する手法です(アナログ基準LPFはカットオフ周波数が1 [rad/s])。表2-11に周波数変換法を示します。

    表2-11 周波数変換法 (*2)


●アナログ基準LPFを周波数変換して所望のアナログHPFを求める

 例えばアナログ基準LPFが次の式で表され、




 それを
カットオフ角周波数ωcのHPFに変換する場合、表2-11に従うと、次式のようになります。




 このように周波数変換をしてもよいのですが、例えばアナログ基準LPFが2次関数で、それをBPFやBRFに変換する場合、表2-11に従うと4次関数になり、回路構成上不都合を生じます。(*3)
 通常IIRフィルタは2次(Biquad)の縦続接続で構成されるため、この周波数変換後は4次関数ではなく、
2次関数(Biquad)の縦続型であるほうが後々便利になります。

(*3)出力のフィードバックループが4重にもなると発振しやすくなる。


●Biquadの縦続接続になるような周波数変換法

 そこで表2-11の変換法をいくつかの代表的な基準アナログLPFに施して整理したものを、フィルタのタイプ別に表2-12に示します。この表によればいかなる場合も
変換後のH(s)は1次または2次伝達関数の積で表されます
 表2-12(a)はアナログ基準LPF→アナログ
LPF周波数変換表、同表(b)はアナログ基準LPF→アナログHPF周波数変換表、同表(c)はアナログ基準LPF→アナログBPF周波数変換表、同表(d)はアナログ基準LPF→アナログBRF周波数変換表です。

   表2-12(a) アナログ基準LPF→アナログ
LPF周波数変換表 (*2)


   表2-12(b) アナログ基準LPF→アナログ
HPF周波数変換表 (*2)


   表2-12(c) アナログ基準LPF→アナログ
BPF周波数変換表 (*2)


   表2-12(d) アナログ基準LPF→アナログ
BRF周波数変換表 (*2)






●具体的に周波数変換してみる

 それではアナログ基準LPFをアナログHPFへ周波数変換してみましょう。2次式ですので表2-12(b)の下段を参考にします。式2-51から次のようになり、

a = 1.41
b = 1.00


 また式2-53からプリワーピング後のカットオフ角周波数は次のようになります。

ωc = Ωc = 12918 [rad/sec]


 したがって表2-12(b)の下段のパラメータは次のよう計算され、

A1 = 1.41 x 12918/ 1.00 = 1.82 x 10^4
B1 = 12918^2 / 1.00 = 1.67 x 10^8
H1 = 1


周波数変換後のアナログHPFの伝達関数は次式のようになります。


 H(s)の周波数特性を求めると次のようになります。カットオフ周波数2055HzのHPFです。
プリワーピングのおかげでカットオフがずれて(ずらして)います(要求仕様は2000Hz)。


次のページへ


目次へ戻る