コラム2E IIRフィルタの係数を求める方法 ●IIRフィルタはアナログフィルタを基にして設計する FIRフィルタではフィルタの係数がそのままインパルス応答となりますが、IIRフィルタではフィルタの係数とインパルス応答に直接的な対応関係はありません。したがってコラム26でFIR係数を求めたような手法(逆DFT→窓関数)は適用できません。一般的にIIRフィルタの場合はアナログフィルタの設計を基にした手法が用いられます。 ●設計仕様の決定 最初に設計仕様を決定します。IIRフィルタにはバタワース型、チェビシェフ型などがありますが、ここでは次のようなバタワース型フィルタを設計します。 ・要求仕様 フィルタタイプ : バタワース型HPF(High Pass Filter) サンプリング周波数 Fs : 22050 Hz カットオフ周波数 Fc : 2000 Hz 次数 N : 2次 ■アナログ基準LPFの設計 まず基準となるLPFを設計します。最終目的はHPFを設計することですが、LPF、HPF、BPF、BRFいずれを設計する際でも最初はアナログ基準「LPF」を設計します。 ●バタワース型とチェビシェフ型がある 図2-150(a)にバタワース型、同図(b)にチェビシェフ型のアナログ基準LPFの振幅特性を示します。バタワース型は通過域が平坦な特性を持ちます。チェビシェフ型は通過域にリプル(波)を持ちますが比較的急峻な減衰特性を持ちます。 ●アナログ基準LPFの伝達関数 表2-10(a)にバタワース型、表2-10(b)にチェビシェフ型アナログ基準LPFの伝達関数H(p)を示します。このようにH(p)は1次または2次伝達関数の積で表されます。なお通常ラプラス演算子(*1)はsで表されますが、ここでは便宜上pと表すことにします。 (*1)ラプラス変換における演算子。アナログフィルタの伝達関数を表すために使われる。ラプラス変換に関してはコラム22、コラム2Dを参照。 表2-10(a) バタワース型アナログ基準LPFの伝達関数 (*2) 表2-10 (b) チェビシェフ型アナログ基準LPFの伝達関数 (*2) ●具体的にアナログ基準LPFを求めてみる 表2-10(a)に基づいて、次数が2のバタワース型アナログLPFを設計してみましょう。 したがってアナログ基準LPFは次のようになります。 式2-51の周波数特性は図2-151のようになります。カットオフ周波数0.16HzのLPFです。 ■プリワーピング ●あらかじめカットオフ周波数をずらしておく プリワーピングとはカットオフ周波数を意図的にずらす手法です(なぜこのようなことを行うかは後述します)。次にその式を示します。 ●具体的にプリワーピングしてみる 設計仕様とするデジタルフィルタのサンプリング周波数は22050 Hz 、カットオフ周波数fc=2000 Hz なので、アナログフィルタに要求されるカットオフ角周波数Ωcは次のようになります。 周波数にすると2055Hzです。若干高い方にずらしています。 次のページへ 目次へ戻る |